資金繰りの方法を検討する際によく聞かれるのがファクタリングと手形割引の違いです。
どちらも資金に関する取引の方法ですが、かなり種類と考え方が違うものになります。
そこでこの記事では、ファクタリングと手形の違いを徹底解説します。
手形とは?
そもそも手形とは、この場合約束手形のことを指します。
約束手形とは、振出人が、受取人またはその指図人もしくは手形の所持人に対して、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する有価証券のことです。
一般的に売掛金よりも支払い期日までの期間が長く設定されることが多く、振出人側は手元の資金が少ない場合でも余裕を持って支払いができると言う特徴があります。
受取人が約束手形を現金化するには、手形に記載された支払い期日を待って金融機関の窓口に持ち込みます。
手形割引の仕組み
企業が資金調達するためによく使われる手段に、手形割引があります。
手形割引も企業間取引による売掛債権をもとに資金を得るものであり、ファクタリングとはよく似た資金調達方法です。
手形割引は、受取人が保有する手形を担保にした融資の一種です。
手形割引を扱っているのは、銀行などの金融機関や手形割引の専門業者などです。
いずれの場合も、保有する手形を業者に差し入れる代わりに、手形の金額を現金化してくれます。
ただし現金化する際に、融資の金利に相当する手形割引料が差し引かれます。
手形割引料は金融機関によっても異なりますが、信用金庫・信用組合で2.5~5.0%、メガバンクで1.5~3.5%程度が相場です。
手形割引の利用例
A社は、取引先B社への売り上げ分として50万円の手形を発行されました。
手形の支払い期日は3ヶ月先でしたが、A社は資金繰りが苦しく運転資金の調達が必要な状況でした。
そのため、手形を取引銀行に持ち込んで手形割引を受けることにしました。
銀行では、まず持ち込んだA社自体や手形の信頼性に対して審査が行われます。
A社自身の経営状態が不安定だったり、取引先B社の信用が低く手形が不渡り(=回収不可能)になるリスクが高かったりする場合、審査で断られることもあります。
この場合は問題なく審査を通過したとしましょう。
その後、A社は一定の割引率(ここでは3.0%とします)で割り引かれた現金(50万円-3%=48.5万円)を手に入れることができました。
審査結果が良くない場合、金融機関では割引を受けられないケースもあります。その場合は民間の手形割引専門会社に持ち込むのも一つの方法です。
手形割引専門会社の審査は金融機関より緩い場合が多いですが、20%程度の高額な割引料を提示されることも珍しくありません。
割引率が高すぎると、手形割引を利用したことでかえって資金繰りを悪化させてしまうこともあるので十分注意が必要です。
手形割引のメリット
手形は、売掛金に比べて支払い期日までの期間が長くなりがちです。
手形割引を使えば、支払い期日を待たずに資金化して運転資金に利用できます。
これにより、資金繰りが厳しい場合でも機動的に資金を準備し、改善させる効果が期待できます。
また手形割引は支払い期日の到来をもって返済が完了するため、一般的な融資に比べて貸借対照表やキャッシュフローへの影響も少なくて済みます。
手形割引のデメリット
手形割引のデメリットとして、最も大きいのは割引料の存在です。
通常、支払い期日まで待っていれば手形の額面金額を満額で受け取ることができます。
しかし手形割引を利用するには銀行や専門業社に割引料を支払わなければならず、満額を受け取れません。
特に利用者や手形の振出人の信用が低い場合、割引料は高く設定されてしまいます。
もう一つのデメリットとして、手形の不渡りリスクは利用者自身が負わなければならない点が挙げられます。
すなわち、手形の振出人が資金ショートや倒産によって手形を決済できずに不渡りになった場合、利用者は割引した銀行や専門業社に対して弁済をしなければならないのです。
一般的に手形割引は資金繰りに行き詰まって利用するものなので、割引で受け取った資金はすでに運転資金として使い残っていないことがほとんどでしょう。
これを弁済しようとするには、高金利なローンを借り入れするなどしてなんとか資金を捻出する必要があり、資金繰りに大きな影響を与えます。
さらに、この場合の弁済は一括で行われる場合がほとんどであり、分割などは認められません。
手形が不渡りとなってしまった場合、割引を利用した会社も連鎖して倒産をしてしまうリスクが大きくなってしまうのです。
上記のような点から、手形割引は資金調達に有効とはいえ、リスクを伴う手段であるといえます。
ファクタリングと手形割引の違い
ファクタリングは売掛債権をファクタリング業社に売却することで、本来の決済期日前に現金化する取引です。
手形割引と似ている点が多いように見えますが、大きな違いが2つあります。
不渡りのリスク
まずは不渡りリスクの有無です。
ファクタリングは債権を買い取ってもらう取引なので、債権の回収はファクタリング業者側が責任を持って行います。
つまり、売掛先が倒産するなどして売掛債権が回収不能になっても、利用者が責任を取る必要はないのです。
こうした契約の形態を「ノンリコース型」または「償還請求権が無い」と言います。
ファクタリング会社の中には利用者が不渡りリスクを負う内容の契約になっているところもありますが、事前に契約書を確認することで避けることができます。
一方、手形割引はあくまで手形を担保にした融資契約です。
不渡りを起こして担保の価値がゼロになれば、当然利用者側が責任を持って返済しなければなりません。
このことから、ファクタリングは手形割引に比べて万が一不渡りになったときのリスクが低い資金調達方法だといえます。
審査
2つ目は審査の問題です。
手形割引はあくまで融資なので、利用者自身が返済できるかどうかという信用能力を重視して審査が行われます。
通常の融資審査と同様に、債務超過や税金の未払い、赤字続きなどのネガティブな要素が多ければ割引を断られてしまう可能性が高くなります。
一方でファクタリングの審査では、売掛債権が確実に回収可能かどうかを重視して審査が行われ、利用者自身の信用はあまりチェックされません。
不渡り時にリスクを負うのはファクタリング業者なので、利用者の返済能力はそれほど見る必要がないのです。
つまり経営状態が不安定な利用者は、手形割引よりもファクタリングの方が資金調達できる可能性が高いといえます。
手形 ファクタリング デメリットがある
手形もファクタリングもどちらも、迅速に資金調達できる手段のひとつです。
しかし、急いで資金調達が必要な会社は経営状態や資金繰りに問題を抱えていることが多く、不渡りリスクや厳しい審査に対応できない場合も多いものです。
手形とファクタリングそれぞれにデメリットがあります。
今どういった回転期間で資金調達が必要なのかを把握して、メリットも多く支払いも早いファクタリングを活用することをおすすめします。